SL人吉・駅弁旅その1〜

今まで何度も訪れた肥薩線ですが、ここは駅弁を片手に車窓を見ながら旅情に浸れる全国屈指のスポット。新緑が眩しい2013年5月12日、その魅力に惹かれる思いで、またしても九州を訪れてしまいました。

         

スタートは熊本駅です。乗る列車や駅舎、駅名標など、現地をアピールするものとツーショットで駅弁の写真を撮るのが私(上ちゃん)のスタイルです。九州新幹線鹿児島ルートが全線開業して2年、駅構内もすっきりしてきました。今回は新幹線コンコースの売店で2012年12月から新発売されている「鮎屋三代 塩焼き」1100円も買いました。あっ、もちろんこの駅弁は九州新幹線の新八代駅の駅弁ですが、熊本駅でも購入できます、念のため。

         

この「鮎屋三代 塩焼き」は2013年の京王駅弁大会にも出品されていましたが、やはり駅弁は、その中でも特に美味しそうな駅弁は、現地で食べたいもの。そんなわけで、この日のためにとっておいたのです。

         

なんと「全国ゆるキャラグランプリ2011」の王者「くまモン」が箸袋に登場していました。さて、塩焼きはさっぱりと美味しいです。甘露煮ではないので、骨までいただけないのは残念ですが、ふっくらとした白身がホント美味しいです。私は天竜川の中流、静岡県の佐久間町(現在は浜松市に合併)で5年間暮らし、鮎の塩焼きは何度も食べていましたが、この駅弁の塩焼きは料亭と同じレベルだと思いました。

         

さて、ディーゼル機関車に引っ張られて、SL人吉が熊本駅のホームに入線してきました。旅の始まりです。

         

おっとその前に、「鮎屋三代」について過去を振り返りながら少し語ります。下は2004年1月13日、京王駅弁大会で購入した「鮎屋三代」。町おこしシリーズと言うことで出された駅弁です。2004年3月13日に新八代と鹿児島中央の間に九州新幹線が開業すると共に、八代と川内の間は肥薩おれんじ鉄道となりました。

      

この駅弁、日本三大急流の1つである球磨川で育った鮎を使用しています。それをこんがり焼いた焼鮎の出汁で炊いた炊き込みご飯、じっくり煮込んだ甘露煮がおかずの中心です。焼鮎はお雑煮などの特別な食事に出汁として使われてきた鮎のことだそうです。焼鮎を作るには、内臓を取り出してから竹串に刺して炭火でじっくり1時間ほど焼き、すると天然鮎は黄金色になるのだとか。そして、そのあとで2昼夜乾燥させるのだそうです。とても手間がかかりますね。

     

メーンの甘露煮もザラメ・お茶・水・醤油をいれて3時間も煮込み、出来たらまたタレを継ぎ足すと言う感じで、もはや鮎エキスを染みこませた秘伝のタレと化しています。仕上げに水あめを入れ、火を止めて、一晩寝かせることによって味を染みこませるという念の入れようです。美味しくないはずがありません。つまり、焼鮎作りから数えて5日間かけて完成するという、「スローフード」なのです。まさに駅弁の王道ですよね。この実力をもってして、2005年開始の第1回九州駅弁ランキングから3年連続で1位を獲得し続けたのでした。

                          

2005年12月8日、熊本空港の売店でも見つけました。空弁バージョンですね。

         

下は2008年1月26日、将棋仮面さんが駅弁大会で購入した「鮎屋三代」。貴重な画像どうもありがとうございました。以下はコメントです。「1月26日に東京・経堂のピーコックでゲットした「鮎屋三代」の内容がマイナーチェンジしたのを発見しました。(こんにゃく→梅干し) 。」

         

ということで、前置きが長くなりましたが2013年5月12日の話に戻ります。SL人吉には車内限定の「おごっつぉ弁当」があり、この日も乗務員が売りに来ましたが、今回は「鮎屋三代」1100円の通常バージョン、つまり甘露煮入りの駅弁にこだわります。なぜなら、下の画像でもおわかりのように、車窓には球磨川があるからです。ここで捕れた鮎を使った駅弁を、その鮎が育った風景を見ながらいただくことで、美味しさが何倍にもなるのです。

         

駅弁を、ごはん、おかず、風景の順番に食べると美味しいですよ。これを私は「駅弁の三角食べ」と呼んでいます。駅弁を舌で味わうのはもちろんですが、目でも耳でも、そして外から入ってくるそよ風を肌で感じながら、あるいは「SL人吉」の石炭の香りがスパイスとなって、体全体で味わうことができます。もっと言うと、「心」で味わう。だからこそ、旅情を感じることができるのでしょう。大げさな言い方ですが、駅弁を、風景や乗る列車など、いろんなシチュエーションを組み合わせた総合芸術として捉えたとき、やはり最高の組み合わせの時が最高に美味しく感じられるということだと思います。それを追い続ければ「駅弁の美学」が成立すると思います。

         

その意味では、「おしながき」も美味しくいただくにはあってほしいもの。これを読んでいるだけで期待が膨らみます。

         

では、骨まで食べられる鮎の甘露煮をいただきましょう。

         

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