「駅弁」未来形の1つか? 保存型釜めし

下は2008年3月9日、常磐道守谷SA上り売店で購入した「常陸牛釜めし」1500円。

     

もしかすると駅弁の「未来形」の一つになるかも知れない、そんな高速道路限定の釜めしです。さっそく中を見てみましょう。

     

というわけで、電子レンジ対応の釜の中には賞味期限1年間の具材レトルトパックに早炊き米が入っています。これらを釜に開けて、電子レンジで10分ほどチンすれば出来上がり、という今までにはなかったタイプの釜めしです。箸は付いていません。

     

賞味期限や消費期限が話題になっている昨今、一部の寿司駅弁や輸送駅弁を除いて、消費期限が1日以内である「なまもの」としての駅弁においても、厳しい時代を迎えつつあります。特に販売数が極端に落ち込んでいる現状のローカル駅弁にとって、売れ残りが続くと死活問題でしょう。そんな時、このタイプの駅弁ならば、消費期限を気にする必要はほとんどありません。なぜなら、1年間という長期にわたって保存できるので、その日の売れ残りを心配する必要がないからです。

     

もちろん、これはもう「駅弁」というよりも持ち帰り用の「土産」として定義されるべきものなのかもしれません。が、食べるときに少なからず駅弁の雰囲気を味わうことはできます。駅弁大会が全国で開催されるようになり、昔と違って、駅弁を家に持ち帰って食べても違和感のない人たちが増えてきました。そして、高速道路の「速弁」に関しては、自宅持ち帰りがコンセプトになっているほどです。さらに、最近では肉系の駅弁などを電子レンジで再加熱することにも抵抗がなくなってきたような印象を持ちます。

     

ならば、袋から早炊き米と具を取りだして混ぜ、1分の加熱を10分にするという程度の手間は、それほど負担に感じるものでもないでしょう。最近は海鮮系で具材をかき回したり振ったりして食べるというものや、袋に入ったイクラやウニをごはんにかけて食べるなどという駅弁も出ていますし、むしろ、ちょっとした調理気分も味わえて楽しめるという見方もあるかと思います。

     

駅弁は列車内で食べるのが望ましい、という理想論はその通りですし、「旅情」を感じなければ駅弁ではない、という考え方もごもっともです。100年以上の伝統を持つ駅弁に関して「かくあるべき」という捉え方を否定するつもりもありません。ただ、特にローカル駅において駅弁を取り巻く状況が悪化し続ける中、昔ながらの商売を続けていたらどうなるか、それは駅弁屋さんの廃業や撤退が後を絶たないことからも明らかなはずです。もちろん、通常の「日持ちしない」駅弁は売り続けて欲しいし、あくまでもそれが中心であってほしいという思いは私も非常に強いです。しかし、これからは「なまもの」の駅弁と併行して、長期保存できる「土産駅弁」も考えていくという発想が、「駅弁」や駅弁屋さん生き残りのためには必要かも知れないと言うことを提案させていただきたいのです。

     

では、調理した釜めしをさっそく食べてみることにしましょう。電子レンジ対応のためには当然ですが、フタも陶器です。炊きあがった釜めしは3〜5分程度蒸らしておくとよいでしょう。

     

よく見てください。お米が立っています。常陸牛は脂身の部分が溶けてなくなってしまったようですが、その分、ごはんに旨味が染みこんでいるようにも思えます。牛蒡や人参、蒟蒻も、食感と味が両方楽しめます。

     

釜が熱いので持つ手は大変ですが、牛肉の味がじっくりと染みこんだ炊きたての釜めしが味わえるというのは、それだけでじゅうぶんに幸せな気分ではないでしょうか。言うまでもなく、お味の方も美味しいです。レトルト食品を調理しただけだろう、と言われればそれまでですが、「常陸牛」という地方の名産を、釜めしとして自宅で味わえたことで「旅情」を感じられるなら、それはそれで良いのではないでしょうか。

     

工夫次第では、駅売りの駅弁売店に電子レンジを1台用意することで、出来立てを車内に持ち込んで味わうこともできます。家に土産として持ち帰った場合でも、1年間保存できると言うことは、もしかすると災害用の非常食としてまで利用できるかもしれません。でも、非常食としてよくある、お湯を注ぐだけでできてしまうという形まで進化させてしまうと、駅弁としてはやり過ぎかなあという気もしなくはありません。

     

もう一度まとめておきます。従来の駅弁の限界、というよりは弁当や総菜のウィークポイントは、調製してから何時間という消費期限の短さにありました。しかし、今回ご紹介した釜めしは、自宅に持ち帰ってチンして食べるタイプのもので、それが味気ないというネックはありますが、このような長期保存型の容器と保存のための包装を施すことによって、各地の名物釜めしをいつでも賞味することができるのです。もちろん車窓と共に食べることこそが駅弁の魅力であると言えますが、比較的賞味期限の長い土産品のお菓子のようなパック詰めを施すことで、期限切れを気にせず製造、販売できるというのは大きな魅力です。このことは、青息吐息の地方駅弁屋さんにとって、未来に生き残るためには一考に値するタイプのお弁当(土産型弁当)であろうと思われます。

     

ところで、「常陸牛釜めし」のような保存用釜めしは他にもあります。下は2007年10月28日、常磐道守谷SA上り売店で購入した「あんこう釜めし」950円。守谷SA上り売店限定品です。

     

「常陸牛釜めし」と同様、エムシーエスジャパンが販売者の釜めしです。

      

賞味したのは購入して4ヶ月経過した2008年2月29日です。

      

電子レンジとは言え、実際にお米を炊くわけですから、炊きあがったら3〜5分ほど蒸らします。

     

すると、味噌風味仕立ての大根と人参入り鮟鱇釜めしの出来上がり。鮟鱇は切り身の他、肝も入っています。

     

下の画像のように、売店ではこんな感じで売られていました。ところが、2008年3月1日には売られていませんでした。代わりに1500円の「常陸牛釜めし」が登場したということでしょうか。

      

下は2007年9月1日、関越道高坂SA下り売店で購入した「焼トン風味 豚肉とごぼうの釜めし」950円。高坂SA下り売店限定品です。

     

これも販売者こそ違いますが、「あんこう釜めし」とは同じ製造者ではないかと思わせる釜めしです。賞味期限は1年間。賞味したのは購入して半年後の2008年2月29日です。

      

こちらも具材を釜に開けてから電子レンジで10分ほど加熱させて完成。そして、炊きあがったあとには「秘伝みそだれ」を加えてまぜます。

     

小2の息子が食べたのですが、炊きたてである上に、醤油味の味付けと豚肉から出るコクが気に入ったのか、いつもなら少食なのにほとんど平らげてしまいました。ごぼうの他ににんじんも入っています。

     

売店では下のような感じで売られていました。限定品なので購入しましたが、他にも北海道、秋田、東京、神戸など、全国の釜めしが何種類か販売されていました。

              

これらの釜めしが「駅弁」として、いつか駅にも登場する日が来るのかもしれませんね。

    

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