九州・弁&弁行脚 〜その3〜

2008年2月3日、熊本港発オーシャンアロー代替輸送の九商フェリーは定刻より3分早い10時52分、島原外港に着きました。11時6分に南島原駅を発車する島原鉄道の諫早行き気動車に間に合わせるべく、タクシーを予約していました。そしてそのタクシーの姿を岸壁に見て、まずはひと安心。言われた通りに桟橋を渡ってすぐの階段を降り、タクシーの見える方向へと急ぎます。

し・か・し、ダッシュして車の前に行くと、あろうことか、運転手がいない。。。呆然。呆然。呆然。。。。

再び階段を駆け上がり、あちこちを探すと、私の名が書かれたプラカードを持った運転手がのんびり立っているのを発見! まさに「ありがた迷惑」という言葉が頭に浮かびましたが、ここはひとまずお礼を言って、すぐさま車に戻ってもらいました。この時、10時54分。とにかくタクシーを発車してもらいます。事前に電話で聞いたときには、南島原駅までタクシーでは5分かかるということでした。しかし、実際には普通に走っても3分で着き、10時57分、南島原駅へ何とか無事に到着。胸をなで下ろしました。そして、ホーム方面に目をやると、そこには夢にまで見た世界が広がっていたのです。


    

南島原駅ではこの日に安徳駅から乗る予定だった国鉄一般色キハ20が、すでにホームに到着し、役目を終えて静かに佇んでいました。幸い車庫入りしていなかったので、記念撮影をパチリ!

    

かくして、フェリー欠航で計画が狂い、少しでもと考えていた島原鉄道南線の廃止区間とキハ20への乗車はなりませんでしたが、四半世紀ぶりにキハ20と再開できたことは、本当に大きな喜びでした。

     

のんびりと時間が流れる出札口で記念乗車券や硬券入場券などを買い、諫早行きの単行に乗り込みました。そして、11時6分、悔いなく南島原駅を後にしました。車内では、島原城を眺めて昔に思いを馳せ、有明海を眺めては旅愁に浸っていました。

     

1時間16分の黄色い気動車での旅。12時22分、定刻通りに諫早駅へ到着。コンビニタイプの弁当はともかく、諫早駅には駅弁のかけらもありませんでした。12時33分の特急かもめで長崎へ向かいます。やっと鉄道の旅らしくなってきました。

     

そして、4分遅れの12時57分、2006年12月以来1年2ヶ月ぶりの長崎駅に着きました。ホームのむこう、駐車場のさらに奥の留置線には間もなく廃止される寝台特急あかつきの車両が長旅を終えて休んでいました。

     

長崎駅では「ながさき鯨カツ弁当」を初めて現地で買うために、改札口を出てすぐの「驛辨當 長崎」の店舗に向かいます。でも、おっとその前に、3年前からこの駅弁に抱く思いを振り返ってみたいと思います。


2008年2月3日から丸3年ほど遡った2005年2月20日、長崎駅の駅弁売店で「ながさき鯨カツ弁当」の見本とポスターがあるのを偶然見つけました。そこで、さっそく購入しようとしたところ、不運にもこの日は販売しないということでした。仕方なく許可をもらい、見本を撮らせていただき、ポスターをもらってきました。これが「ながさき鯨カツ弁当」との最初の出会いです。

     

店員さんの話によると、2004年の暮れか、2005年の正月に登場したと記憶している駅弁だと言うことでした。一時期まったく姿を消してしまったかに思われていた鯨肉が近年、調査捕鯨数の制限が徐々に拡大されてきたおかげで、再び市場に出回るようになったということです。

気になる味について聞いてみると、鯨専門店の「くらさき」が南氷洋のミンク鯨を秘伝のタレに漬け込んだもので、からっと揚げた竜田揚げのような風味があるカツだということでした。カツなのにソースはいらないそうです。現地で発見しつつも買えなかったという無念さは残りましたが、こうして2005年2月は長崎駅をあとにしたのです。

しかし、思ったよりも早くチャンスは訪れました。それから2ヶ月経った2005年4月16日、ラッキーにも静岡伊勢丹の「長崎・鹿児島物産展」で「くらさき」が実演しており、「鯨カツ」のみを初めて購入できたのです。

     

2005年4月の今回は「鯨カツ」のみで、残念と言えば残念。しかし、長崎でフラれてから2ヶ月での再会はラッキーには違いなく、喜ばなくてはなりません。長崎で売られていた見本と比べて見た感じ、実演のものも、おそらく掛け紙は共通なのではないかなと思いました。

     

帰宅して食べてみると、柔らかい竜田揚げという感じです。なるほど醤油味が施されており、ソースをかけないでそのまま食べた方が確かに美味しいと思いました。なんだか小学校時代の給食が懐かしく思い出されます。家では子どもたちも「おいしい」と言って食べましたが、私が「クジラだよ」と言った瞬間、「なんで!? かわいそうじゃんよ〜。」と言って、平成生まれの娘2人は食べるのをやめてしまいました。昭和を生きた私と違って、今はそういう時代なんですねえ。。。(^^;) ただ一人、「え〜、クジラさんなの?」と驚きながらもパクパク食べていた5歳の息子は、まだ事情の分からない「オコチャマ」だったということでしょうか。。。


さらに1年半が過ぎ、2006年1月、この駅弁は京王駅弁大会に初登場しました。

現地で初めて食べるという希望は果たせなかったものの、2006年1月14日、実演販売で「ながさき鯨カツ弁当」をやっと購入することができました。 2006年京王駅弁大会では「カツ対決」ということで、名古屋駅「びっくりみそかつ」と共に目玉商品として出品されていました。これで知名度は相当上がったことでしょう。下の画像がそうです。

     

秘伝のタレに漬け込んだ南氷洋のミンク鯨カツは、味付けがしっかりなされているので何も付けなくてもおいしく食べられます。しかも、小学校の時に給食で食べていた鯨の竜田揚げと異なり、非常に柔らかいです。御飯は茶飯のようで、錦糸玉子も散らされているので、やはりカツだけ食べるのとは違い、立派な「駅弁」として仕上がっていました。

     


とまあ、こうして2年越しで初めて「ながさき鯨カツ弁当」を賞味できたわけですが、現地で食べてみたいというのが駅弁マニアの性(サガ)。2006年12月に再び長崎駅でアタックするも、ここでも見事に振られてしまいました。しかし、一度現地で買うと決めた以上、2007年、2008年の京王実演には見向きもしません。そして、ついに2008年2月3日のこの日を迎えたのです。

下は2008年2月3日、長崎駅にて無予約購入した「ながさき鯨カツ弁当」。1050円。発売当初より300円値上がりし、掛け紙も変わって、時の流れを感じてしまいます。

      

茶めしだった御飯は白くなり、鯨肉のそぼろをまぶしています。錦糸玉子だったときよりも純粋に鯨の風味を楽しむことができるようになりました。そして、鯨の立田揚げが添えられています。ちなみに2008年の京王でもこの体裁でした。味付けされた鯨カツを一口ほおばれば、それはもう至福の世界。たった一つだけ難を言えば、それは列車の中で食べられなかったことです。次に来るときには必ず長崎本線の列車で食べようと心に誓いました。

     

長崎駅で初めて現物に出会えた念願の「ながさき鯨カツ弁当」を手に、駅前から高速バスに乗車しました。この旅も、いよいよ終わろうとしています。


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