2005年8月8日、お待たせいたしました。中学1年生のゆうが夏休みの自由研究で、駅弁に使われている「わさびシート」の効用について実験することになりました。

今回は「わさびシートの効用」ページを受けての実験となりますが、いきなり「ワサオーロ」の説明書きに、「使用する場合は必ずお弁当の蓋をすぐに閉じて下さい。」とあり、それは当たり前のことなんですが、カビの実験をするのにそんなに密閉してしまっては生えるものも生えないのでは、といきなり心配になってきました。また、わさびシートの効果が切れたら新しい物と交換するかどうかとか、食パンが乾燥してきたら水を足そうかどうかなど、いくつかの壁にぶつかっています。まあしかし、そのあたりは行き当たりばったりということで。。。

     

これが今回使用した実験道具。わさびシートはバランタイプのものしか手に入りませんでしたのでそれを使用。また、からしシートも使用しています。また、ここにはありませんが食酢も使いました。

1.実験の手続き

できるだけ天然素材を使った(かびやすい)食パンを4等分して水に浸した後、10個用意した発泡スチロールのお椀の中にそれぞれ入れます。湿らせておくためにさらに水を25tずつお椀に加えておきました。なお、食パンは保存料などを極力抑えた自然素材のものを購入し、この日で消費期限が切れるものを使用しています。室温は約30℃。
@わさびシート(ワサオーロ)
Aからしシート(おべんと元気)
Bチューブ入り和生からし
Cチューブ入り生わさび
Dチューブ入り生しょうが
Eチューブ入り生にんにく
F梅干しをほぐしたもの
G食酢
H何も加えない(水のみ)・・・これが基準(統制群)となります。
I何も加えない(冷蔵庫で保存)
J何も加えない(水も加えず、そのまま常温でもともと入っていた袋に入れておく。)

これら10種類のお椀を比較的じめじめした台所の横の棚(日陰)に置いておき、カビの生え具合を毎日観察するという単純な実験です。これにより、わさびシートの効用はいかほどのものか、また、抗菌力が強いものはどれかを調べていきます。

     

上段左から生わさび、生にんにく、生からし。中段左から生しょうが、梅干し、わさびシート、からしシート。下段左から食酢、何も加えないもの、同じく何も加えないもの(冷蔵庫行き)です。[1日目]

2.観察の様子

@観察3日目[8月11日]

観察をはじめた3日目、早くも変化がありました。[3日目]

     

ご覧の通りで、生しょうが↓については明らかにしょうがの部分から黒、青、白のカビが生えています。↓ しょうがにはカビに関しての抗菌力は乏しいと言わざるを得ません。[3日目]

      

また、冷蔵庫に入れておいたもの、実験の残りをそのまま袋に入れ直しておいたものを除き、すべての食パンにカビが生え出しました。でも、わさびやにんにくなどを塗った箇所に生えているカビはありませんでした。
気になるのは右のからしシート↑(置き方のミスで字が逆になりました。^^;)。シートの回りが黄色くなってきていて、これは成分が食パンに含まれた水分によって流れ出したということでしょうか。そうでないことを祈りますが、もし万が一そうだとしたら、食材にからしの味が移ってしまうこともあるのかも知れません↓[3日目] 。

     

A観察4日目[8月12日]

カビのオンパレード状態になりました。抗菌効果の差がはっきりと分かるようになってきました。[4日目]

     

生しょうがはさらにカビが多くなり、梅干し↓にも発生。梅干しは東京都の実験では抗菌作用が高かったはずなんですが。。。生からしは回りから攻められて危うい状況です。わさびシートとからしシートは回りからカビが迫ってきてはいるものの、シートが当たっている部分は今のところしっかりとガードできています。また、冷蔵庫に入れておいたもの、実験の残りをそのまま袋に入れ直しておいたものにはまだカビが生えていません。食酢、生わさび、にんにくもなかなか健闘しています。[4日目]

      

右の生からし↑は回りから攻められているようですが、からしシートと同じように、周辺(左右の下の方)に黄色いものがにじみながら広がってきている様子が見て取れます↓[4日目]。

前述のように、わさびシート↓が当たっている部分はしっかりとカビからガードできています↓。[4日目]

     

B観察5日目[8月13日]

ここまでくるとカラフルだと笑っていられないですね。悪臭も放っています。[5日目]

     

そのまま袋に入れっぱなしの食パンと冷蔵庫に入れている食パンにはまだ全くカビが生えていないというのは皮肉ですが、その他にはしっかりとカビが生えています。生しょうがはかなりの部分をカビにやられ、梅干しもカビに侵されています。色が薄くなってきた生わさび、生からしや、生にんにくはまるで堪え忍ぶかのようですが、そろそろ黄信号が点ってきた感じです。わさびシート、からしシートもそろそろ周辺部分から危なくなってきました。食酢↓は比較的安定しています。一番防カビ効果があるのは食酢かなという気がしてきました。[5日目]

      

右のからしシート↑も最終防御線を突破されそうな感じになってきました。[5日目]

こちらはわさびシート↓の様子です。こちらにもカビの魔の手が。。。[5日目]

     

C観察6日目[8月14日]

そろそろやめた方がいいかなと思えてきました。台所が臭くてたまりません。[6日目]

     

生しょうがについては完璧にカビに占領されてしまいました。梅干しはカビでズタズタにされています。生わさびと生からしもじわじわとカビの侵略が進行しているようです。生にんにくと食酢はそれでも頑張っています。袋に入れて常温で置いてある食パン↓(消費期限8月9日)は期限を5日経過しましたが、まだカビは生えておらず、水以外何も加えずに冷蔵庫に入っているものも見た目は無傷です。[6日目]

      

右の生わさび↑に関しては、白カビが中心部近くやや右下に生え始めました。[6日目]

生からし↓についても、周辺部はもちろん、中央部にもカビが飛び火してきました。[6日目]

     

わさびシートもからしシートもそろそろ限界かなと思えてきました。いよいよ明日あたりがクライマックスでしょうか。

D観察7日目[8月15日]

観察をしてきた中1の「ゆう」は見るなり「う〜ッ、キモイ、クサイ。」
やはりもう限界のようです。ちょうど観察して1週間経ち、ある程度結果が見えてきましたし、明日はゴミの日なので、今日で観察を終わることにします。[7日目]

     

生わさびも生からしもカビにやられ、すでにカビの占領地と化している生しょうがと梅干しのようになる日は近いと思われます。それはわさびシートやからしシートも同じことでした。強いて抗菌の効果を順位づけすると、一番カビに強かったのは冷蔵庫入りのもの、そしてほぼ同じレベルで常温でなるべく空気に触れにくくしたもの。次に食酢、生にんにくの2つ。さらに生わさび、生からし、わさびシート↓、からしシート。そして梅干し。一番効果が見られなかったのは生しょうがだと思いました。[7日目]

      

わさびシートを取るとこうなっていました↑(右)。限界はあるにせよ、わさびシートはある程度の抗菌作用を持っていたと言うことが分かります。[7日目]

ついでにからしシート↓も見てみましょう。[7日目]

      

からしシートを取るとこうなっていました(右上)。こちらの方が効果はわかりやすいですね。[7日目]

最後に比較的カビに強かった2つを見てみましょう。まずは食酢↓。[7日目]

      

そして右の生にんにく↑。これなら「にんにくシート」の方がいいかも知れませんね。[7日目]

3.結果

カビの生え具合を表1にまとめてみました。決して科学的な判断とは言えませんが、塗った部分のカビの面積が「ゆう」と「上ちゃんお父さん」の見た感じの印象として0%は◎、5%程度未満は○、10%程度未満は△、30%程度未満は×、30%程度以上50%程度未満は××、50%程度以上は×××としました。

表1 実験条件によるカビの生え方の違い    
実験条件\日数 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目
生しょうが × × ×× ×××
梅干し × ×× ×××
水のみ(統制群) × ×× ×××
生からし × ××
生わさび × ×
わさびシート × ×
からしシート × ×
生にんにく ×
食酢
袋入り水なし
冷蔵庫水のみ

4.考察

統制群である「水のみ」が4日目くらいからカビに冒されてくることからして、それと大差のない(むしろひどいという印象すらある)「生しょうが」や「梅干し」は、今回の実験では防カビという点においてほとんど抗菌作用が見られないということがわかりました。

一方で、「生からし」、「生わさび」、「わさびシート」、「からしシート」については、カビに対するある程度の抗菌効果が見られたと思います。1〜2日くらいは防カビ効果が延ばせるのではないでしょうか。また、生にんにく、食酢についてはカビに対する比較的強い抗菌効果が見られました。こちらは3〜4日くらいは防カビ効果が延ばせそうです。
また、空気になるべく触れさせなかった「袋入り水なし」は消費期限から1週間経っても何の変化もなく、相変わらずしっとりふっくらとしていておいしそうな香りさえ漂っていました。さらに「冷蔵庫水のみ」は食パンの柔らかさや風味こそなくなりましたが、カビは全く生えませんでした。つまり、カビの生える条件である湿気や空気、温度などを調節することで、大それた抗菌シートなどを使わなくても、カビは1週間程度ならば十分に防げると言うことも分かりました。

実際、駅弁はしっかりと蓋にくるまれることで空気からある程度遮断され、さらに比較的涼しい場所に保管されて売られています。しかも、もともとその日のうちに消費される性格の食品ですから、普通に食べるぶんなら全く問題なしです。強いて言えば、夏場とは言え悪くても翌日までならば、カビのつかない状態であると言える(カビが生えないというだけで、実際に食べられるかどうかは保証しません)でしょう。ましてや気温が低く冷蔵効果が期待できる冬場ならば、輸送駅弁として前日に作られたものを次の日に食べてもほとんど問題ないでしょうし、食酢を用いた寿司であるならば全く問題がないと言えるかと思います。さらに空気に触れない真空パックならもっと保存できるだろうという印象も強くしました。

今回の観察結果では「わさびシート」、「からしシート」のある程度の防カビ効果が証明されました。ただ、夏場なら当日、冬場でも次の日に駅弁を食べるのならば、その抗菌シートすらいらないということもまた言えると思います。しかし、抗菌シートは「気休め」だ、不経済だからいらない、と結論づけてしまうのはどうでしょうか。一種の保険として、より安全性を高めるという意味においては、やはり「有効」だと思います。客も抗菌シートがないよりはあった方が安心できるというものでしょう。

今回残念だったのは、「生しょうが」と「梅干し」です。「生しょうが」ならばまだ許せますが、「梅干し」の結果はいったい何なのでしょう。おそらく、梅干しのよく漬かっていない中身の部分で抗菌成分が弱いところにカビが付いたのではないかと予測できます。しっかりと漬かった皮の部分だけを使用していればまた違った結果になったのかも知れません。

それに比べ、「生にんにく」の抗菌作用には感心させられました。調べませんが、きっと科学的な理由があるのでしょうね。これなら「にんにくシート」を商品化した方が良いのではないか、とさえ思えてきます。ただ、無臭にんにくならまだしも、わさびやからしに比べて他の食材の風味を損なってしまうような気がしますので、やっぱりなくてもいいかなあ、というのは「ゆう」と「上ちゃんお父さん」との一致した意見でした。

最後に、「食酢」のパワーを改めて感じる結果となり、大変嬉しかったです。ごはんに食酢をまぜて「寿司」にするということがどんなにか古来から続く日本人の知恵であり、「保存食」なのだなあと実感できました。

[おまけ]
今回、ここまで真面目にやってきた観察実験でしたが、(これは最近わかったことですが)「ゆう」の通う中学では「理科の自由研究」を夏休みの宿題にしていなかったことが判明(*_*)。 ひっくり返る「ゆう」の姿を皆さん想像して下さい(^^;)。でも、「ゆう」はたぶん、後悔していないと思っていますよ、たぶん。。。

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わさびシートの効用を実験