四国オトコ駅弁の旅〜その4・終〜

2008年7月26日から27日にかけて、素材をストレートに味わえるような「オトコ」の駅弁を求めて四国を旅しました。そして、その最後に紹介するのが、2005年の秋に登場した徳島本線の無人駅・貞光駅の駅弁です。それにしても、なぜ無人駅に駅弁が。。。

まずは駅弁行脚の報告の前に、この駅弁との出会いを述べておきます。
下は2006年3月12日、静岡県内のスーパー駅弁大会で購入した「阿波尾鶏とりめし」。2005年10月頃よりジャパンフーズシステムを通じて、本格的に駅弁大会に参入している駅弁です。内容は、JAS認定第1号地鶏の「阿波尾鶏」を豪快に食べさせる駅弁。鶏肉は歯応えがあり、噛むと旨味が出てきます。たまたまなのかもしれませんが、駅弁大会で購入すると「生すだち」が入っていないのでしょうか。残念です。いつか現地で食べてみたいと思う駅弁です。

    

つまり、この駅弁はもともと日本鉄道構内営業中央会会員である「栗尾商店」(菓子では全国区の知名度)が、駅弁大会で全国展開できる商品を開発しようとして生まれた駅弁であろうと思われます。しかし、そのためには当たり前のことですが、現地売りをする必要がありました。乗降客が少ない無人駅ではあるものの、特急が停車し、栗尾商店が貞光駅構内に出店していることから、現地売りの実績を作り、売り上げの多くを駅弁催事に期待しようとする形で、この「阿波尾鶏とりめし」は生まれたのでしょう。

    

次に現地売りの様子を。
下は2006年1月5日、岡山県在住はやしさんが購入した「阿波尾鶏とりめし」。貴重な駅弁のご報告と掲載許可、誠にありがとうございます。以下ははやしさんのコメントです。

      

「最近発売された、貞光駅弁を買いに行きました。 2006年3月までの期間限定で毎週火、木曜日に1日3食のみ販売との事です。売店の窓口です。横には駅弁の幟もありました。かなりアピールしてます。」

      

「雰囲気的にはノンビリしていて、新幹線開業前の出水駅の松栄軒さんの雑貨売店に似ています。左下のように、栗尾商店さんの向いのキオスクは閉鎖されてます。 もともと駅事務所・窓口のあった場所に無人化後、JR直営のウィーリーウィンキィーが出店し、その後閉店、そこで地元の有力企業の栗尾商店さんが出店をした様です。 右下は栗尾商店さんの本社と後方の工場です。駅から見えます。全国への販路開拓を図る「阿波の逸品」としてアピールして行くという記事が徳島新聞に掲載されました。」

      

「また、「阿波尾鶏とりめし」発売 貞光駅、県内唯一の公式駅弁 という記事も徳島新聞に掲載されました。右下の画像は中身です。 なんとか軌道に乗って続投して貰いたいですね。 あるいは深川の様に銘菓で稼いで相乗効果で知名度を上げるとか。」

      

と、いうはやしさんのご報告を受けて2年の月日が経ちました。お待たせいたしました。念願かなって2008年7月26日に貞光駅を訪問した際のご報告です。2006年3月以降の販売は(駅弁大会を含め)どうなっているのか、もしかして撤退してしまっているのか、とても不安でした。

    

しかし、ご安心を。2008年7月現在、火、木の午前10時頃に1日3個(2個のこともある)限定で店頭に置かれ、継続販売されています。他の曜日に購入する場合は要電話相談。(0883−62−2715 栗尾商店)。貞光駅構内の栗尾商店のお店に聞いてみると、社長さんの心意気で、駅弁は今後も出来る限り続けていくとのことでした。店の前にはラジカセが置かれ、社長さんがこの駅弁のことでラジオか何かに出演したときのご様子がずっと流されていました。ここでも社長さんはこの駅弁について熱く語っておられました。

    

さっそく購入。今度は「すだち」がしっかり入っていました。そのスダチをかけると酸味が広がって味がしゃきっと引き締まります。肉は弾力があって、出来立てで温かいのですがそれなりに固いです。しかし、そのぶん噛んでいると鶏肉の旨味がじわ〜っと口の中に広がります。コクがあり、うまい鶏肉です。

    

ごはんもふっくらと炊きあがり、そぼろや炒り卵との相性も抜群。店員さんがおっしゃるには、「見てくれだとそうじゃないかも知れませんが、鶏肉のかたまりを照り焼きにしてそのままご飯の上に。女の私じゃボリュームがあって、とても。。。これはね、男の駅弁ですよ。」

     

そう、「オトコ」の駅弁なのかもしれない、と妙に納得してしまいました。それは単にボリュームがあるからと言うだけでなく、その食材のいいところを前面に押し出して、たとえ少々固くても、噛めばその旨さがわかるというものさ、という男の主張めいたものをこの駅弁から感じ取ったためです。下手なおかずはいらない、おかずでごまかしたくない、ただ阿波尾鶏を食べてみてくれ、スダチをかけるともっと良くその旨さが引き出されるから試してごらん、と言われているようでした。そして、実際その通りにすると、ウマイ。そして最高!

    

今回の駅弁行脚で紹介した四国の駅弁は、この「阿波尾鶏とりめし」のように、どれも食材の旨味をストレートに味わうための駅弁ばかりだったように個人的には思います。

最近では懐石弁当のようにいろいろなおかずを少しずつ折に詰めて味の違いを楽しむ駅弁が増えており、それを便宜的に「女性好みの駅弁」と呼ぶとすれば、四国には主食材の喰わせ方にこだわった、「オトコ」の駅弁がまだたくさん残っていることに、ある意味で嬉しさを覚えた旅でもあったのでした。



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