2022年8月10日、肥前山口駅の駅前「エキ・キタ」にある枡屋で購入した「ムツゴロウちらし寿し」と「かしわめし」共に500円。

 

1976年、高校1年生だった当時以来、私は何度となくこの駅弁獲得に挑戦し、そのつど蹴られてきました。幕の内や普通のお弁当など、掛け紙ばかりがいたずらに増えました。しかし、1980年代半ばにこの駅弁は消え、今思えば、なぜ予約しなかったのだろうと後悔しています。しかし、21世紀になってやっと掛け紙を手にすることができました。そして、まさか2022年、江北町町制施行70周年で全国の駅弁ファンに名を馳せた「むつごろうちらし寿し」と「かしわめし」を復活させる企画があったとは!。。。江北町ならびに常盤軒からレシピを受け継いで調製を手掛ける枡屋さんに、感謝感激雨あられの心境です。

 

2022年5月4日、江北町が肥前山口駅北口に整備していたコンテナショップ「エキ・キタ」をオープンさせました。駅北口を出てすぐ右側にテラス風のスペースがあり、飲食店を中心にした9店の中に枡屋さんがあります。


  

左上が肥前山口駅北口。右上は「エキ・キタ」の全容です。また、下は枡屋さんの店舗です。枡屋さん0952-86-2391は江北町内にある懐石料理屋ですが、数年前より江北町では「ムツゴロウちらし寿し」と「かしわめし」の復活に向けた事業「町駅弁研究会」を立ち上げ、枡屋さんはその補助を受けて元駅弁屋の常盤軒からアドバイスをもらいながら試作を繰り返してきました。

  

2017年には常盤軒のレシピと掛け紙を受け継いだ「かしわめし」をイベントで販売し、その後も何度か限定販売を試みてきたそうです。そして2022年5月の「エキ・キタ」オープンを機に、「ムツゴロウちらし寿し」の復活となったようです。

  

長崎行きの特急「白いかもめ」の車内でいただきます。専用のレジ袋まであるなんて、素晴らしいの一言。特に「かしわめし」に関しては今後も「街弁」として定着させたい意図があるのでしょう。鶏は完全なそぼろ状態で、鳥栖や折尾のそれとは異なります。鶏の炊き込みご飯の上に錦糸卵と板海苔、そして紅ショウガ。500円で売られる限り、必ず地元に定着しそうです。毎日10本「エキ・キタ」に置いているとのこと。

 

さて、「ムツゴロウちらし寿し」は常盤軒に「むつごろうちらし寿し」の掛け紙が残されてなかったようで、今回新調したとのこと。だからカタカナ表記にしたのでしょうか。

 

真ん中の黒いのがムツゴロウの蒲焼。薄くて小さいですが、濃厚な味わいです。他に蒲鉾、酢蓮、胡瓜、奈良漬、でんぶ、煮豆と、やはりムツゴロウが主役なのでした。500円の価格は1980年代までの価格であり、それも嬉しいですね。

 

肥前山口駅まで行かなければ味わえません。街弁としては人気が出なかったようで、現在は前日までの要予約ということです。

 

実は肥前山口駅は9月23日の西九州新幹線開業に合わせて「江北駅」に改称する予定だそうで、それは寂しいと言えば寂しいですが、その前に「肥前山口駅のむつごろうちらし寿し」を買って食べたい、というのが目的の旅でした。

  

それでは最後に、半世紀前のノスタルジアに浸ってみましょう。

      

上は1980年代半ばの掛け紙、下は1960年代後半の掛け紙だと思われます。佐賀米のすし飯一面に錦糸玉子が散らされ、その上に蒲鉾やキュウリなどとともにムツゴロウの蒲焼きがのっています。後にも先にも、有明海の珍味ムツゴロウが食べられる唯一の駅弁でした。ムツゴロウの姿は黒く、体の表面にはまだらの斑点があり、目玉は飛び出しているという何ともグロテスクな魚。しかし、蒲焼きにするとめっぽう旨かったという噂です。

            

肥前山口駅の名称はなくなっても、「肥前山口駅のむつごろうちらし寿し」は不滅です。「エキ・キタ」の運営も2025年までは最低存続するらしいので、まだまだ復刻駅弁購入のチャンスはありそうですが、お早目の購入をおすすめします。

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