2009年2月21日、小淵沢駅で予約して購入した「甲州名物あつあつほうとう鍋」880円。2009年1月8日から小淵沢駅で販売開始され、この日に開幕した新宿京王百貨店駅弁大会でも売られました。電子レンジで温めなければ食べられないタイプの駅弁としては日本初であると思われます。

    

上は調製元である丸政本社前から小淵沢駅方面を望んだ画像です。この日は肌を刺すような冷たい風が吹いていました。ある意味でアツアツのほうとう鍋日和です。

     

小淵沢駅です。駅舎のすぐ横に丸政の直営店「デュオレール」があり、ここで購入した駅弁などの飲食スペースもあります。この日は店頭に「甲州名物あつあつほうとう鍋」はありませんでしたので、購入する場合には予約が無難でしょう。家で温めずに旅先で食べたいという方には「デュオレール」の店員さんに頼んで温めてもらうといいでしょう。右下の画像は八ヶ岳です。

     

私は家で温めることにしました。あとは帰るだけです。でもせっかく訪れた甲州路。たまには寄り道をしようと言うことで、御坂(みさか)峠の天下茶屋に寄ることにしました。ここは「生まれてすみません」の作家、太宰治が小説「富岳百景」を執筆するにあたって3ヶ月逗留した場所です。太宰治は2階の部屋にいました。現在では文学記念室になっています。

     

「富岳百景」は「富士には月見草がよく似合ふ」という名文を生んだ小説でもあります。身も心もボロボロになって心機一転、ここにやってきた太宰治は、作品の中で御坂峠から見る富士山を「あまりにお誂え向き」「風呂屋のペンキ絵」と否定していましたが、茶屋や周囲の人々の温かさに触れ、次第に心を開き、最後には「富士山ありがとう。さようなら」とお礼を述べて去っていきます。2009年は太宰治の生誕100周年を迎えました。左下が御坂からの富士。右下は河口湖畔から見た富士です。

     

河口湖駅にやってきました。駅の改装工事が完成して、モダンな駅に生まれ変わりました。ただ、駅弁はありませんでした。ホリデー快速「河口湖」号、フジサン特急とツーショットの駅弁「ほうとう鍋」。

     

さて、自宅に帰ってきました。「あつあつ」弁当というと紐を引っ張るタイプをすぐに想像してしまいますが、こちらは電子レンジで加熱するタイプ。注意書きが入っていました。

    

箱を開けるとこんな感じです。容器はよくあるタイプの電子レンジ加熱容器。蓋が安易に開かないように工夫されています。

    

温める前の中身です。水分がありません。この具の下にスープがゼラチン状に固まって入れてあるということでした。それを加熱して液体に戻すというわけです。パッケージには「レンジで5分」と書かれていますが、京王で購入された方からのアドバイスで、私は6分半ほど加熱することにしました。

    

これが温めた直後の「ほうとう鍋」。しっかりとスープが染みだしてきています。具も予め火は通してありますので、大変柔らかくて美味しく頂けます。具のメインとも言えるカボチャがホクホクしています。うどんもコシがあります。下味がほのかに付いているゴボウは柔らかく、シメジはシャキシャキしていました。

    

実は21世紀初頭に加熱式の駅弁「ほうとう鍋」が売られていました。しかし、紐を引くタイプでは加熱が十分ではなく、関係者曰く「失敗!」ということで、消えてから改良に改良を重ね、5年ほど経って、ついに日本初の電子レンジ必須駅弁として生まれ変わったのでした。山梨の伝統的な郷土料理を駅弁として手軽に味わってもらいたいという調製元の心意気には頭が下がります。

    

少し角度を変えてみました。寒い時期にこのような温かい鍋を数分待てば食べられるというのは本当に嬉しいですね。列車に乗る直前に「デュオレール」で加熱してもらい、車内で八ヶ岳や富士山、南アルプスなどの美しい山々を眺めながら賞味できたら最高ですね。今度、ぜひ試してみたいです。

    

さて、私は箸でかき回すこともせず、普通に上からうどんをつるつると食べていましたが、そろそろ麺がなくなろうとする頃、下から豚肉が顔を出しました。しかも4枚、これは嬉しいプレゼントです。と同時に、最初にかき回して食べるべきだったと後悔しました。

    

電子レンジ加熱が必須とは、ある意味では味も素っ気もないように思えます。しかし、加熱するから美味しくなるのですし、それを駅売店でやってもらい、車内に持ち込んでアツアツを食べることで、とても贅沢な気分になれること請け合いです。しかも880円ですから、言うことありません。駅弁の新しい形の一つが小淵沢駅で生まれたのです。

    

なお、後日談というか、翌日談を。たまたま散髪したあとに近所のスーパー駅弁大会へ行ったところ、なんとチラシにはなかった「甲州名物あつあつほうとう鍋」が山積みされていました。前日の遠征は何だったのかと多少ヘコみましたが、でも、美味しい駅弁をもう一度ゲットするチャンスに恵まれたと思い直すことにしました。

    

前日は豚肉を埋もれさせたままで撮影した画像もしっかりと撮り直すことができました。長女がその様子を見て欲しそうにしていたので食べてもらいました。とても美味しいと言われ、まあめでたしめでたし。

    

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