北越駅弁まんぷく旅〜その1〜

2009年1月24日から25日にかけて北越地方を旅しました。その目的はズバリ金沢駅弁・大友楼が調製する1万円の駅弁「加賀野立弁当」。大友楼は1830(天保元)年創業の老舗料亭。四條流の儀式料理が代々受け継がれてきた加賀藩の御料理所でもあります。いつかは食してみたいと憧れてきたその伝統的食文化の技を2009年1月25日、ついに味わう瞬間がやってまいりました。

     

野外でのお茶席である「野立て」のイメージになぞらえて作られた、本格的な加賀料理のお弁当です。上の画像は金沢駅の地下、北鉄金沢駅に隣接する吹き抜けの庭園にて。ここのベンチに座り、雪見をしながらいただくのも風流ですが、やはり駅弁として列車でいただこうと思います。

      

右上の売店(5番線ホーム)で受け取りました。本来は3日前に3個以上の予約が必要ですから、購入へのハードルは高いです。そこで今回は一緒に購入してくださる方を事前に募りました。しかし、岡山県在住の倒壊ていおーさん以外の名乗りはありませんでした。それでも大友楼に電話してみると、たまたま1月25日は他の客から予約が入っており、この日なら便乗が可能ということが告げられました。つまり、ラッキーなことに2個の予約注文でも手に入れることができたのです。何でも月に10個程度はコンスタントに注文が入るらしく、運が良ければ3個に満たなくても手にすることはできそうです。この駅弁が欲しい方はまずは電話してみることをオススメします。

     

上の画像は特急はくたか13号。はくたか乗車は何回かありますが、初めて北越急行の真っ赤な車両に当たりました。使用するきっぷは「北陸フリーきっぷ(グリーン車)」ですので、食すシチュエーションとしては申し分ありません。車内で不織布の弁当風呂敷を開いてみました。箸袋の裏には「加賀料理本舗 大友楼」の名がありました。料理長自らが腕をふるうというこの弁当には、他の駅弁とは異なり、両端が細くなっている会席膳用の祝箸が使用されています。

     

金ピカの掛け紐を外すと掛け紙がその全容を現しました。「御料理」とだけ書かれ、至ってシンプルです。弁当箱は2段重ねの箪笥型引き出し付きで、取っ手金具まであり、高級感を演出しています。ただ、材質は木製ではなく、木目調の発泡材料PSP(ポリスチレンペーパー)だと思われますが、その分、中身にお金がかけられているのだと好意的に解釈しました。

     

掛け紙も外しました。すると、蓋にも「御料理」のラベルが。左下には「特別調製品」と書かれた金ラベルも貼られています。箱の大きさは縦15.5センチ、横22センチ、高さ12センチでした。

     

さて、蓋を開けて、いよいよお待ちかねの中身を大公開です。。。と思ったら、そこには梅模様の透明シートが被せられていました。下段の引き出しも同様でした。よく見ると、中に椿の花、梅の花、紫蘇の花(穂じそ)?も入っています。特に椿と梅には近い春を感じさせます。

     

車窓に映る雪を見ながらいただくことにします。下段の引き出しを開けてみました。左側には海老や椎茸、ちょろぎの入ったちらし寿司、右側には加賀名物の治部煮やフルーツの盛り合わせが入っていました。

     

こういうお弁当にはやはり日本酒が合います。金沢で最も愛されていると言われる地酒「福正宗」のしぼりたてをヒヤでいただきました。

     

では、上段のおかずから見ていくことにしましょう。なお、予め申し上げますが、このお弁当にはお品書きが添えられていないので、グルメ評論家でない私は料理名や食材名には自信がありませんし、もちろん間違いもあるでしょう。その場合はぜひご指摘願います。

     

まず、最初に手を付けたのは柚子。上の画像では右下端のもの。その中に入っているのは海鼠(なまこ)スライスとイクラ。酢加減がバッチリで、なまこのコリコリとする食感がたまりません。これは酒飲みにとってはどう考えても酒の肴です。日本酒を買い込んで良かったと心から思いました。できれば買い忘れのないように、日本酒をサービスに付けて欲しいくらいでした。

     

柚子の右上には餡子を芯にした粉吹き干し柿。これ、トロトロしています。その右上に殻付き蛤の真丈のようなもの。蒲鉾風です。その左は伊達巻きですが、芯は鶏肉のミンチでしょうか。その左に牛肉の牛蒡巻き。牛蒡がホクホクしています。さらに左に殻付き焼き海老が2尾。柚子の左側にある白いものは白梅の花びらをイメージした百合根でしょうか。

     

上の画像で、右上のサンドイッチ状のものは鯛かヒラメの昆布〆。ヒラメでしょうか。かなり肉厚で身の繊維も細かく、舌の上でとろけます。とても上品な味がします。その左のオレンジ色はツブ貝の雲丹和え。その左には茄子の味噌田楽。さらに左の薄ピンクは梅形蒲鉾が2切れ。その下はこれも梅を意識したかに見える餅菓子。その右側に楊子で刺しているのはわかりにくいですが、巻き貝の壺焼き。たぶん白バイ貝でしょう。そして、手前の一番左端のオレンジ色のもの、これが酔っぱらってしまったので謎ですが、玉子の黄身の濃厚な味がしました。カラスミかウニか、磯の香りがしました。それらを練って黄身と混ぜ、蒸したような、グミのような感触でいて、歯切れは悪くない、とにかくこれは私の中ではかなり気に入ったおかずで、これだけでも酒が十分に進みます。

     

上の画像で右端下に見えているのは鰻の蒲焼き。これもまた肉が厚いの何のっていうくらいの鰻です。その左にちょろぎと一緒に和えているのがホタルイカの酢みそ和えでしょうか。マヨネーズの風味もありました。その上の黄色いものは柚子の果肉を蜂蜜か何かと混ぜて甘煮にしたという感じの、まさに「和菓子」である「水菓子」。少し感じる苦みもたまりません。その上の赤帯と黄色帯の牛皮(求肥)で包んであるのも和菓子。加賀料理は菓子が多いのでしょうか、甘味がいくつも入っていますね。牛皮の右は先述した玉子の黄身もどき。その上は椿の葉に隠れていますが、蒸し鮑。これもかなりの大ぶり鮑でした。画像の左下は燻蒸した雰囲気の帆立。でかいです。これもまたカラスミのような食感で、弾力があり、新鮮で濃厚な味です。その上は開いた海老の身がぷりぷりした天ぷら。その上はシシトウの素揚げ。

     

上の画像で、梅形のものは小芋かな。その左に薩摩芋の甘煮か柑橘系の果汁で煮たもの。その上の竹輪麩みたいなのはブリの西京味噌行きのような味で、これも口の中でとろけます。その左奥にはふわっとした、う巻き。芯が泥鰌ならばさらに良かったのですが。。。はじかみの下の白い、鮑にちょっと遮られているのは、梅じそ風味にチーズ、牛蒡、インゲンをスルメで巻いたものでした。さらにその左横にチラッと見えているのは鴨肉のうま煮。はじかみに平行してい結び目が見えているのは笹ちまきでした。続いて下段に行きましょう。

     

左の引き出しには錦糸玉子が敷きつめられた、ちょっと酢が詰めのちらし寿司。具は肉厚海老、ちょろぎ、椎茸、紅ショウガでした。巻き寿司は4個。柴漬けの海苔巻きと、おぼろ昆布巻きの胡瓜巻き。右の引き出しは治部煮が中心です。

     

下は治部煮です。鴨肉が分厚いこと。椎茸、加賀麩、花麩、ワサビで色合いも良く、何と言っても鴨肉の弾力と、噛めば噛むほど旨味が湧いてくるのには感動しました。今まで食べた中では最高です。しぶじぶと煮た煮汁も出汁が効いていて美味しかったので、すべて飲み干しました。温かくない、冷えた状態だからこそ、この美味さは本物です。

     

この「加賀野立弁当」は1991年に走り出した大阪発札幌行き豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」がきっかけとなっています。レストランカー「ダイナープレヤデス」の予約制フランス料理ディナーコースには限りがあり、それを補う形で誕生したそうです。

     

  中部の駅弁リストに戻る トップページに戻る    

  駅弁行脚インデックスページに戻る 

  さらにこの旅を続ける