北陸・駅弁王国の旅 〜その2〜

2007年8月23〜24日、富山から敦賀まで北陸・駅弁王国を旅しました。ここ金沢駅の駅弁は、天保元(1830)年に創業し、加賀藩の御膳所で料理方を務めた老舗の料亭「大友楼」が作っています。日本料理の起源にも由来する四條流料理儀式を家伝として170年余、駅弁に関しては北陸線金沢駅開業(1898年)と同時に販売を始めて100年余、他とはひと味違った格調高い料亭の味を楽しむことができます。

下は2007年8月24日、3日前までに予約して金沢駅で購入した「ふみばこ弁当」1200円。左上に「特別調製品」と書かれた金色シールが貼られているように、これは予約をして買う駅弁です。

   

まず、中を開いて出てくる透明シートには天満宮によく見られる梅鉢紋(うめばちもん)といわれる紋様が散りばめられています。それもそのはず、加賀百万石の殿様、前田家は天神様である菅原道真公の子孫であると伝えられているからです。加賀藩の場合、幼剣梅鉢(ようけんうめばち)と言って、梅の中心部分を小さな5つの剣が取り囲む形になっています。そして加賀藩の殿様料理を任されていた大友楼だからこそ、この家紋を使用することが許されているのでしょうね。このシートがあることで、まるでお殿様のお弁当のように見えてくるから不思議です。

   

画像ではちょっと見にくいですが、左上には玉子焼きがあります。この玉子焼き、プレーンの玉子焼きではなく、人参やインゲンなどが中に入っていて色鮮やかなのは当然、食感も楽しいです。加賀料理の代表格である治部煮、殻がしっかりと剥かれた海老煮、スジがきれいに取り除かれているネーブル、色合いと配置にまで神経が注がれている料理の数々は、これを食す人を必ずや感動させるはずです。

   

「ふみばこ」とは、相手を思い、心を込めた手紙を大切に持ち運ぶための箱だと言うことです。このお弁当をひと箸ひと箸口に運ぶごとに、金沢の味を心で味わうことができそうです。

   

下は2006年12月29日、CHさんが購入した「ふみばこ弁当」。貴重な画像どうもありがとうございました。以下はコメントです。

          

「2006年12月29日、金沢駅の北陸トラベルサービス売店で購入。1200円。9分割の中にご飯が3つ、おかずが6つ入っています。 大友楼だけあってハズレはなく、どれもおいしくいただきました。昼過ぎに金沢駅を通りかかると、普段は予約しないと買えない「ふみばこ弁当」が売られているのに気づき、昼を食べたばかりなのに思わず購入。夕ご飯にしました。駅弁図鑑のものとは箱も中身も違いますが・・・。」

          

ここで、話を2007年8月に戻しましょう。

実は本当のことを言いますと、大友楼の味の真髄を心ゆくまで味わいたいという理由から、「加賀野立弁当」10000円、「加賀大名弁当」5000円、「玉姫弁当」3500円のいずれかを注文したかったのです。しかし、最低3個からの予約ということであまりにも高額すぎますし、持ち帰りも大変です。それでもこの日の夕方に京都駅で家族(子ども)2人と合流する予定がありましたので、女性向きで量の少ない「玉姫弁当」3500円をせめてと思い、打診してみました。

                            

しかし、あいにく金曜日ということで料亭の方が忙しいらしく、食材の準備に心が砕けないということで、やんわりと断られてしまいました。仕方がないので未食の「彩香花」1000円か「花の舞」950円のいずれかをと思い、聞いてみましたが、こちらも作れないということで、完全に意気消沈。それなら今回は「ふみばこ弁当」だけにして、高額駅弁はまた今度にしようと諦めかけたとき、「では『犀川』2100円はどうですか? 厳密には駅弁ではありませんが、二段弁当ですし、高級な雰囲気が少しは味わえるはずです」と先方からのオススメ。これに乗らない手はありません。


下は2007年8月24日、金沢駅ホームで受け取った御料理弁当「犀川」2100円。

   

明らかに治部煮が「ふみばこ弁当」のものとは違います。食感も違うし、鴨肉の風味がしっかりと漂っています。画像ではわかりませんが、玉子焼きは今度は混ざり物はなく、プレーンでした。車海老のフライも身が締まっていて新鮮そのもの。練り物もそれぞれに美味しいです。

   

ごはんは梅と瓢箪に象られ、瓢箪型の方はちらし寿司です。この上に載っていた茹で海老も新鮮さがひと味違います。夏らしく、涼しげな和菓子も付いていました。

   

こういうお弁当を食べるときは、さすがに特急列車がいいですね。「しらさぎ」車内でいただきました。

   

見て楽しみ食べて楽しむ「芸術品」に心もお腹も満足したところで、次は北陸の食材をストレートに味わう駅弁を求めて、さらに旅を続けます。


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